オリジナル小説『8月31日の夜に』④

A子の手紙

A子の手紙

 驚かせてしまってごめんなさい。もし驚いていなかったとしても、やっぱりごめんなさい。本当は普通の手紙を出したかったんだけど、そうもいかなくて。今の私はまるで丸まることのできないアルマジロ。

 実は私、新学期から学校に通えなくなるの。いろいろな事情があるんだけど、一番大きな理由は、結婚するということです。私には許嫁がいて、今どき本当あり得ないんだけど、古い政略結婚で、嫁いだらもう学校には通うなって言われてて。本当は16歳の誕生日が来たらすぐに結婚するはずだったんだけど、直前になって世間体を気にしたみたい。せめて18になるまで待とうってことになって、けどそれなら卒業まで待ってくれてもいいのにね。まあでも覚悟は決めてるの。突然こんなこと知らされても困るとは思ったんだけど、君には伝えておきたくて。前振りが長くなったけど、君に伝えたいことは1つ。

 君のことは小学生のころから気になっていて、本当はもっと仲良くなれたらよかったんだけど、私って目立つから、あまり自由に動けなかったんだ。別に周りの目なんて気にする必要なかったのにね。延長された2年間は結構充実してたけど、君との思い出がないことだけが心残りかな。こんなこと言っても困らせるだけか。

 けどもし、いつかまた会えたら、いろいろ話せるといいな。数年後、数十年後でも。そのころには、君もどこかで働いていて、誰かと結婚して、子どももいるのかな。今は全然想像できないけど、そうだといいなあ。

 本当にこんな形で伝えることになってごめんなさい。もし嫌じゃなかったら、たまに私を思い出してこの本を見てね。

 それじゃあ元気でね。おわり。

※noteの『#8月31日の夜に』に着想を得た作品です。
※気まぐれに加筆・修正・有料記事化する場合があります。

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